大会概要About
メインテーマ:
日々に根ざしたSST日程:
2023年7月16日(日)
オンデマンド配信 2023年7月24日(月)〜8月31日(木)会場:
名古屋国際会議場
https://www.nagoya-congress-center.jp/access/
地図はこちら大会長 :
高木 友徳 (医療法人糸逢会 ともこころのクリニック 院長)
実行委員長:
吉田 みゆき (同朋大学 社会福祉学部 教授)
会長講演
テーマ『SST普及の30年 ― 現在地から先を見渡す』講師:丹羽真一(福島県立医科大学 会津医療センター 精神医学講座)
【紹介文】
本協会は2025年に発足30年を迎えるので、30周年記念事業実行委員会が既に活動を開始して向こう3~4年間にわたる記念事業をスタートさせています。その嚆矢は西園昌久先生の「SSTと精神療法」の出版と普及です。日本におけるSST普及の30年の経験には、世界と共通するSSTの発展と、日本独自の発展とがあることを見ておきたいところです。「SSTと精神療法」は日本独自の発展の一つですが、SSTで生きづらさと取り組む当事者の思いや価値観を中心に据えたひとりSST、当事者グループが毎日の生活課題をSSTで解決する取り組みの中から生まれた当事者研究、普通の市民が日常生活の困りごとをSSTで解決する誰でもSSTなども日本独自の発展です。日本独自の発展は、生きづらさや日常生活の困りごとをSSTで主体的・能動的に解決しようとする当事者をサポートする取り組みの中での発展という点で共通しています。こうしたSST発展の現在地から先を見渡すとき、SST発展につながる道筋は「第二の認知革命」によって舗装されているように見えます。
1950年代に始まり、人工知能研究、計算機科学、神経科学の発達に後押しされて広がった学際的な流れは認知革命(cognitive revolution)と呼ばれます。それは科学が「心」の実態に迫ることができるとするもので、「認知革命」以後、行動を支配する「心」を科学の対象とすることができるとの考えが広がりました。そこでは、入力処理系(S)、出力処理系(R)、それらを統合する統合処理系(О)をこころの客観的実体として科学の対象とするようになったのです。これが第一の「認知革命」ですが、これに対して統合処理系(О)を制御しているイマジネーション系(I)をも含んでこそ「心」のモデルとなるので、個人の心の中身をも含んで科学の対象とするという考え方が心理社会療法に関わる新しい動向に共通しており、それを第二の「認知革命」と呼びます。第一の認知革命が計算機科学や神経科学の発展に後押しされたと同様に、第二の認知革命は心理学、精神・神経科学、人工知能、大規模データ処理法の発展に後押しされた結果であり、「心の理解」から「心の支援」へと「心」を舞台とする科学が大きく臨床へと広がった結果だと思います。この動向は当事者の感情・主体性を尊重して行うというもので、それは支援の実践における態度の問題であるだけでなく、それでなければ精神の科学は発展しないという認識の現れであり、「こころ」へのアプローチの方法論における歴史的な転換とみなすべき動向だと思います。
SSTの現在地に至った道をふりかえりますと、日本独自の発展はまさに「第二の認知革命」の流れの中にあると思います。現在地から先を見渡しますと、この流れで舗装された道を歩み、当事者主体のco-productive and decision sharing SSTに取り組むことがSST発展につながると思えるのです。
鼎談
テーマ『働くことに大切なソーシャルスキル ~地元の企業経営者を交えて~』講師:夏目 浩次(一般社団法人ラ・バルカグループ 理事長・QUON CHOCOLATEプロジェクト 代表)
齋藤 秀一(株式会社ネットアーツ 代表取締役・株式会社まなぶ 取締役会長・株式会社ココトモファーム 代表取締役)
高木 友徳(医療法人糸逢会 理事長・株式会社Wellness and Recovery Promotion 代表取締役・株式会社ともプロダクション 取締役)
【紹介文】
本企画は、久遠チョコレートの夏目代表と、ココトモファームの斎藤社長をお迎えし、大会長である高木を含めた鼎談となっております。
このワークショップに参加される方はほとんど医療、福祉、あるいは司法領域で仕事をしている専門職の方々だと思います。愛知県には、一般企業として成功しつつ、障がいを持つ方々に働く機会を提供していらっしゃる素敵な会社があります。その代表のお二方にご登壇いただいて、各企業の理念や実践をお聞きし、「働くことに大切なソーシャルスキル」について議論を深めます。社会の風を感じつつ、「働く」ということの本質について見つめられたらと思います。またとない貴重なお時間となります。ぜひご参加ください!
シリーズ『先達に聞く』
Aブロック講師:前田 ケイ(ルーテル学院大学 名誉教授)
【紹介文】
私がリバーマン先生のSSTと出会い、東大病院デイホスピタルで、SSTグループを始めてから今年で35年になります。初期の頃、精神科医療のリハビリテーションの方法としてSSTを行っていましたがほどなく、私は保護観察所、更生保護施設でのSSTのお手伝いをするようになりました。2006年からは刑務所でも就労準備のためにSSTが導入されるようになり、今では、薬物依存対策や出院準備教育などにもSSTが行われるようになりました。学校教育でも普通教育や、特別支援学校における教育などでもSSTが導入されています。当日は、多様な領域を代表する3名の支援者と対話しながら、SSTの現状を掘り下げてみたいと思います。
社会はどんどん変化していくので、多様な当事者の認知と行動の改善のために、私達はいつも、いつも職種を越えた仲間と一緒に支え合って、創意工夫を続けて行きましょう。一生勉強、が私のモットーです。
Bブロック
講師:安西 信雄(帝京平成大学大学院 臨床心理学研究科)
【紹介文】
西園昌久先生の「SSTと精神療法」の出版にチームで取り組んで、歴史の「事実」は背後にある「思い」に裏打ちされてその「意味」が理解されることを実感した。「先達」とはおこがましいが、ご依頼をお受けした。司会の天笠崇事務局長から沢山質問をいただいた。SSTを始める前に私が何を考えていたか、SSTに出会って最初にどう感じたか、SSTを実践してみた手応え、「SSTリーダー養成クラス」や「診療報酬化」に取り組んだ意図は何か。また、「重度かつ慢性」研究や、現在取り組んでいる「オンラインジャーナル」の企画、「新しいSST」への思いや展望について、そして「後進に伝えたいこと」をお話ししたい。当日は時間の許す範囲で会場の方々からも質問をお受けしたい。
Cブロック
講師:皿田 洋子(六本松心理教育臨床オフィス)
【紹介文】
『臨床心理士の私が行ってきたSST』
私は臨床心理士としてこれまでSSTに36年間携わってきました。病棟、デイケア、作業所、クリニックでは試行錯誤しながらやってきました。後半は指導の立場でかかわる機会が増えました。大学では教育、臨床心理士をめざす学生に、司法の領域では保護司さん、法務教官、そして地域支援では訪問看護のスタッフに。教員生活最後の3年間は学校現場に出向いて学生と一緒にSSTを実践し、その意義を実感し、退職後の今は学校の先生に知ってもらえる機会を作っています。さらに日常のカウンセリングの中では、状況に応じてSSTを組み込んでいます。いろいろの領域にかかわってきたことからSSTは誰にも役に立つことを実感し、当日は、実際の経験をお話して、皆さんのお役に立てばと思っています。
Dブロック
講師:河岸 光子(医療法人社団欣助会 吉祥寺病院)
【紹介文】
『先達に聞く』というお題をいただき、まだまだその域に達しておりませんが、これまでの経験をお話する予定です。
(1)SSTとの出会い
30年前精神科看護に足を踏み入れ右も左も分からず、関連学会に参加し勉強しました。その中からSSTこそ患者さんへのアプローチに有効だと感じ、前田ケイ先生が講師をされていたSST初級研修会に参加し、ロールプレイの魅力を感じ、まさに魔法のような感覚に魅了されました。
(2)さまざまな先生の良いとこ取り
認定講師を目指すために様々な先生に就き、良いとこどりを実践してみました。その中から自分にフィットし、「相手にどう伝えるか、どう伝わったか」のスキルを磨きました。
(3)自分自身のコミュニケーションスキルがアップすることで患者さん、職場、上司、家族、仲間づくり、うまくいかない時に問題解決、工夫、当事者目線、看護師長として病棟管理、特にスタッフの良いとこ探し、能力開発などSSTに助けられました。
(4)伝えたいこと
出会いを大切に、学ぶ姿勢、仲間づくり、寄り添う
セミナー
スポンサードセミナー1(大塚製薬)
テーマ『FACEDUOを活用したSST~デイケアプログラムにおけるJob Finding Club』講師:加瀬 昭彦(横浜舞岡病院)
座長:北岡祐子((創)シー・エー・シー)
【紹介文】
精神科デイケアには様々な利用目的があるが、就労準備訓練もその一つである。しかし、統合失調症をはじめとする精神疾患は、思春期など比較的早期に発症することが多く、職業体験が全くない利用者も少なくない。このような利用者のために、一般社団法人SST普及協会の監修のもとに作成されたバーチャルリアリティ・社会生活スキルトレーニング(FACEDUO)をデイケアのプログラムで実施することにした。①その効果を社会的職業的機能評定尺度で評価する②FACEDUOの使いやすさをSystem Usability Scaleで評価することで、その有用性を検証することも目的にしている。今回は導入の経緯を中心に実際の様子を紹介する。
スポンサードセミナー2(中島映像教材出版)
テーマ『訪問支援で使えるSSTを活用したWEB利用の服薬管理プログラム~訪問服薬・心理教室プログラムHOPE~』講師:高木 友徳(医療法人糸逢会 ともこころのクリニック)
座長:橋本 俊英(上毛病院)
【紹介文】
現在、精神科医療は「入院医療中心から地域生活中心へ」という方策により在宅患者への訪問サービスの充実が図られている。そして服薬アドヒアランスの向上は再発・再入院防止の重要課題となっている。服薬自己管理モジュールは米国のリバーマンらが開発した自立生活技能訓練プログラムである。通常は集団で実施されるが、訪問で実施するためには個別対応が必要となり、実施時間の制約も生ずる。そのためSST普及協会内のタスクフォースが、在宅訪問サービス用の訪問服薬・心理教育プログラム(HOPE:Houmon Psycho-Education on Medication Program)を開発した。HOPEプログラムは1回約15分、8回で構成されており、モバイル機器を用いて個別に実施するインターネットを活用した新しい服薬自己管理サポートシステムである。
今回のセミナーでは、これまでに行ったパイロットスタディから、HOPEの効果を統計的に解析したデータを報告する。HOPE実施前と後に施工したDAI-10、事前・事後テスト、および事前・事後面接の結果を数値化して解析した。その結果、DAI-10も事前・事後テストもHOPE後でHOPE前よりも有意に大きくなることが明らかになった。また罹患からの経過期間や、単身生活か家族と同居かといった生活の様子に関わらずHOPEによって服薬アドヒアランスの向上が期待できることが示された。
さらに、HOPEを実施した一症例を交えつつ、その効果について検討を行う。なお、症例報告についてはご本人の了解を得ている。症例は30代の統合失調症の男性である。アドヒアランスは不良で、幻覚妄想状態が続いていたため訪問看護を開始したが、当初ご本人は訪問に拒否的だった。2ヶ月ほど経った頃、HOPEを開始した。初回、ロールプレイで薬剤師役をやってもらうと、彼がもともと持っている丁寧さや真面目さが発揮され、スタッフは素直に肯定的なフィードバックを行った。すると彼は初めて「ありがとうございます」と笑って応えた。当初は服薬チェック表も記入できなかったが、4回目の頃には自分でテキストとペンを持ってきて、集中して取り組むようになり、徐々に内容を理解した質問をするようになった。実施したスタッフの感想としては、ロールプレイによって本人の良いところが見え、関係づくりに役立ったと、SSTの要素の有用性が挙げられていた。
分科会
分科会Ⅰ【定員50名】:愛知で逢おう,みんなと交流会講師:足立 一(高知リハビリテーション専門職大学)
村上 元(札幌なかまの杜クリニック)
大和田 誠子(ワナクリニック)
【紹介文】
この3年近く、新型コロナの影響で私たちのSSTは、一時は中断したり、新しい方法を模索したりと大変な時間を過ごして来ました。しかし、そんな中でもでも決して後退はしていなかったと思います。
新型コロナとの付き合い方が少し変化して来ているこの頃ですが、今回のワークショップの分科会では「愛知で逢おう、みんなと交流会」を企画しました。
愛知の地でみなさんとお会いしながら、一緒に悩みを解決したり、他施設の工夫や実践をみんなで共有したり、仲間を作ったり、3名の講師でみなさんと一緒に楽しく有意義な時間を過ごしたいと思っています。
ぜひご参加ください。
分科会Ⅱ【定員50名】:子どもに対するSST
講師:柴田 貴美子(埼玉県立大学)
【紹介文】
昨今は医療や学校のみならず、学童や放課後デイサービス、習い事の現場においてもご家庭と連携した、子どもの特性に応じた関わりが必要とされているように思われます。そのような中、特に障害や発達の問題を抱えたお子さんとのコミュニケーションでは「こんなときどうしたらいいのだろう」と感じることも多いのではないでしょうか?今回は発達障害のお子さんに焦点を当て、適応行動を促すためのSSTや支援者としてのご本人、ご家族へのアプローチについてご紹介したいと思います。また、事例を通したグループディスカッションも予定しております。皆さんが「こんな状況ではどう対応したらいいのだろう」と思われるような場面について、一緒に考えつつ親睦を深めましょう。
分科会Ⅲ【定員40名】:就労をめぐるSST
講師:龍 忠史(就労継続支援B型 アットホーム)
池田 耕治(訪問看護ステーション アトラス福岡)
【紹介文】
就労支援の現場で支援者より、「○○さんにこれが出来るようにしてください」「○○さんにきちんと挨拶や報告ができるようにしてください」と頼まれることがある。これはSSTか?SSTでどうにかできるのか?本人の希望を大切にするSSTでどのように取り上げるのか。本人が気持ちを大切にしながら、支援者としてどのようにかかわったらよいのか。試行錯誤しながら実践しているところです。
当日は皆さんからの事例を取り上げながら、皆さんと一緒にロールプレイ(グループの体験)を行う体験がメインのプログラムです。一緒にグループワークを体験しながら、明日からまた頑張ろう!と思えるような時間にしたいと思います。
分科会Ⅳ【定員80名】:コインマップからの個人SST
講師:前田 ケイ(ルーテル学院大学 名誉教授)
【紹介文】
コインマップとは心理的・社会的葛藤を抱えている人達を支援する方法の一つです。紙の上に自分や自分の生活に関わりのある人達をコインに換えて、紙の上に置いていき、出来上がったものが自分の人間関係のマップのようなものなので、コインマップと呼んでいます。現在ばかりでなく、自分の過去や近い未来のマップも作って見ることができます。
マップを作る過程での当事者自身の気づきが重要で、これからの取り組みの目標を作る上で役に立ちます。当事者の希望に従って、将来のためにSSTによる「行動リハーサル」を実行してみることもできます。
分科会では、参加者全員が小さなグループに分かれて実際にコインマップを体験してみます。
シンポジウム
テーマ『日々に根ざしたSST』座長:福永 佳也(大阪府岸和田子ども家庭センター、SST普及協会学術委員)
シンポジスト:
1.当事者の方(ともこころのクリニック)
2.小島 正嗣さん(名古屋市精神障害者家族会連合会)
3.池戸 裕子さん(児童心理療育施設 桜学館)
【紹介文】
みなさんにとって、SSTは“日々に根ざした”ものでしょうか。本シンポジウムでは、大会テーマである『日々に根ざしたSST』について、様々なお立場の方々に語っていただく機会としました。
当事者の方は、クリニックのデイケアプログラムとしてSSTと出会われ、今も意欲的にSSTプログラムに参加を続けられています。プログラムを離れた場面でも、仲間同士や職場の人たちとのやりとりの中で、どんなことにSSTが“役立っている”のか、ご自身の体験をお話いただきます。
ご家族である小島さんは、SSTと出会われ参加を続けて来られました。SSTに参加されていることを知らない息子さんが、ある時小島さんに「変わった」と伝えられたそうです。毎日顔を合わせる家族だからこそ、やりとりの難しさや、変化に要する時間の長さを感じられています。ご家族にとってのSSTについて、お話いただきます。
いろいろな傷つきを抱えている子どもたちを支援している池戸さんは、どのようにすれば相手も自分も傷つかないコミュニケーションとなるか、子どもたちを支援する上で工夫や苦労をご紹介いただきます。SSTは、子どもたちを支援するだけでなく、職員間や支援者自身の学びにも繋がっているとの思いもお話いただきます。
シンポジウムの前半は、SSTとの出会いや実践を中心に、後半ではシンポジスト間の質疑応答も交えながら、それぞれの立場や経験に基づいて内容を深められたらと思います。
大会最後のプログラムになりますが、現地会場でしか聞けないお話なので、どうぞ楽しみにしてください。